不動産を売却するときに注意する点 その2 ―売却時のトラブルを防ごう―

「住み替えのため」「終活の一環として現金化したい」など、家族の都合や経済的な事情などにより不動産の売却を検討することがあるでしょう。不動産の取引は大きな金額になりやすく、人生のうち何度も経験することではないことから、売却にあたり注意すべき点が多々あります。

そこで今回は、不動産売却時のトラブルを防ぐために注意すべき点について解説します。これから不動産の売却を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。

不動産を売却する際の注意点

不動産売却でのトラブルを未然に防ぐためには、ご自身でもある程度勉強しておくことが大切です。ここでは不動産を売却する際の注意点について解説します。注意点をしっかりと理解した上で、不動産の売却に向けて行動していきましょう。

余裕のある売却スケジュールを立てる

不動産の売却は大きな金額の取引となりやすいため、半年~1年程度かかることが多いでしょう。売却までに1年以上かかるケースも珍しくありません。そのため、ご自身の納得できる取引をするためには、売却までのスケジュールに余裕を持たせることが大切です。

「〇年〇月までに売却しなければならない」と期限が決まっている場合は特に、早めに行動し始めることをおすすめします。売却までのスケジュールに余裕がないと、買主を見つける時間がないので思うように売却活動を進められない可能性があるからです。焦って判断しないようにするためにも、余裕のある売却スケジュールを立てることをおすすめします。

ある程度売主も相場等を調べておく

不動産会社が行うのは、あくまで不動産を売却するためのサポートです。そのため、不動産売却の最終判断は売主本人が行うことになります。何も知識がなければ判断基準も生まれないので、売主自身もある程度相場等を調べておくとよいでしょう。

不動産ポータルサイトで売りたい不動産と近い条件の物件の価格を見ておくことで、大まかな価格帯を知ることができます。もちろん、まったく同じ条件の不動産はないこと、広告上の価格=成約価格ではないことから、価格は参考程度となることが多いでしょう。しかし、売主自身でも相場を調べておくことで、売却を依頼する不動産会社を選ぶときや売却価格を決めるときなどに役立ちます。その他、不動産売却を売主自身が納得して進めるために、売却までの一般的な流れについても学んでおくとよいでしょう。

複数社に査定を依頼する

不動産を売却するにあたり、まずは不動産会社に査定を依頼するのが一般的です。不動産会社に査定を依頼するときは、1社だけでなく必ず複数の会社に依頼することをおすすめします。不動産会社によって得意分野や集客方法などが異なるため、複数社に査定を依頼することでご自身の売却方針に適した会社を選びやすくなります。できれば、大手の不動産会社と地域に根差した不動産会社どちらにも相談してみましょう。

査定金額だけで不動産会社を選ばない

売却を依頼する不動産会社を選ぶ際には、査定金額だけで判断しないようにすることも大切です。不動産会社が算出する査定金額は、その金額で売却できることを保証しているわけではありません。不動産会社が直接買い取る「買取」とは異なるため、購入希望者から値下げを要求されたり、なかなか買い手が見つからず値下げをして売却活動を続けたりすることもあるからです。査定金額で売却できなくても不動産会社が損をするわけではありません。「査定金額=売れる金額」ではないことに注意しましょう。

不動産会社の中には、契約を目的としてあえて相場よりも高い査定金額を提示するところがあることにも注意が必要です。査定金額と適正価格が大きく離れている場合、売却のチャンスを逃してしまう可能性が高まります。他社よりも高すぎる査定金額を提示された場合は、その金額となった根拠も確認してみてください。

不動産売却にかかる費用を確認する

不動産の売却にあたり、仲介手数料や税金、登記費用などさまざまな諸費用がかかります。不動産の現況によっては、測量費用や建物の解体費用などがかかるケースも。諸費用によって手元に残るお金が大きく変わることもあるため、あらかじめ確認しておきましょう。

不動産売買契約書の中身をきちんと確認する

一般的に、不動産売買契約では契約上の取り決め等を書面に残すために不動産売買契約書を作成しています。つまり、不動産売買契約書に書かれている内容は、すべて大事な約束事です。大きな金額が動くこと、確認しなければならない項目が多いことから、不動産売買契約書の中身をきちんと確認した上で署名・捺印をしてください。契約書には普段見ることのない法律用語が並ぶことが多く、すぐには理解しにくいかもしれません。わからないところがあれば、その都度不動産会社に確認することが大切です。

売却前はむやみに費用をかけすぎない

売却前は目的なくむやみに費用をかけすぎないように注意しましょう。たとえば、あらかじめリフォームをしてから売却活動を始めると、「自分好みにリフォームしたい」という購買層を逃してしまう可能性があるからです。高額な費用をかければ必ず高い価格で売れるとは限りません。売却前にリフォーム等をする場合は、ターゲット層や需要の高い間取り・設備などの条件を市場分析した上で検討してみましょう。

囲い込みにあわないよう注意する

不動産売却の囲い込みとは、売却を依頼した不動産会社が他社から紹介される買主を拒む行為のことをいいます。簡単にいえば、売主・買主どちらからも仲介手数料を受け取って自社の売上を上げることを優先しているので、自社で買主を見つけることに固執して他社を排斥しているのです。

囲い込みをされると売却のチャンスを逃してしまい、売主が損をしてしまう可能性が高まります。そのため、不動産の売却では信頼のできる不動産会社に依頼することが大切です。

不動産売却の囲い込みについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

不動産を売却するときに注意する点 その1 ―囲い込みに注意する―

媒介契約の違いを理解した上で選択する

不動産の売却を依頼するときには、不動産会社と媒介契約を結びます。媒介契約には「一般媒介」「専属媒介」「専属専任媒介」の3種類があるため、それぞれの違いやメリット・デメリットを踏まえた上で選択することが大切です。

専属専任媒介

主な特徴 メリット デメリット
  • 媒介契約できるのは1社のみ
  • 売主自ら買主を見つけて契約することはできない
  • レインズの登録義務あり(媒介契約締結後5日以内)
  • 販売状況の報告義務あり(1週間に1回)
  • 契約を結んだ不動産会社が必ず仲介することになるため、積極的な販売活動をしてもらいやすい
  • 専属媒介よりも報告義務の頻度が高いので、販売状況を把握しやすい
  • 囲い込みのリスクがある
  • 1社のみなので売却活動の成果は不動産会社の力量次第
  • 売主自ら買い手を見つけることができない

専属媒介

主な特徴 メリット デメリット
  • 媒介契約できるのは1社のみ
  • 売主が買主を見つけて契約することも可能
  • レインズの登録義務あり(媒介契約締結後7日以内)
  • 販売状況の報告義務あり(2週間に1回)
  • 1社のみの媒介契約なので、積極的な販売活動をしてもらいやすい
  • 報告義務があるので販売状況を知ることができる
  • 囲い込みのリスクがある
  • 1社のみなので売却活動の成果は不動産会社の力量次第

一般媒介

主な特徴 メリット デメリット
  • 複数の不動産会社と媒介契約が可能
  • レインズの登録義務なし
  • 販売状況の報告義務なし
  • 複数の会社に依頼できるので、不動産会社選びのリスクを抑えられる
  • レインズの登録義務がないので周囲に知られずに売却活動を行うこともできる
  • 他社で売却が決まる可能性もあるため積極的に販売してもらえない可能性がある
  • 報告義務がないので販売状況がわかりにくいことも

前述した「囲い込み」は1社のみの契約となる「専属媒介」「専属専任媒介」で起こりやすいため、複数の不動産会社と契約できる「一般媒介」を選択することで囲い込みを防ぎやすくなるでしょう。ただし、一般媒介には他社で売却が決まる可能性があることから積極的に販売してもらえない可能性がある、報告義務がなく販売状況がわかりにくいことも考えられるなどのデメリットもあります。媒介契約の種類を選ぶ際は不動産会社に言われるがまま契約するのではなく、3種類それぞれのメリット・デメリットを理解した上でご自身に適したものを選択しましょう。

物件種別での売却する際の注意点

ここでは、物件種別に応じた売却時の注意点について解説します。物件の種類によって異なる注意点があるため、売りたい物件に適した売却方法を考えていきましょう。

マンション

マンションを売却する際には、同じマンション内で売り出されている住戸がないか確認してみてください。戸数の多いマンションの場合、既に別の住戸が売り出されているケースも珍しくありません。同じマンション内にあるライバル物件の条件を踏まえた上で、売却方法を考える必要があるでしょう。

戸建て

戸建ての場合は、土地・建物どちらも現状を確認しておく必要があります。たとえば、土地の権利関係や隣地との境界が明確になっているか、建物の修繕履歴や雨漏り等の劣化箇所はどこであるかなどの確認をします。建物の現状に不安を感じる方は、専門家によるインスペクション(住宅診断)を検討してみてください。

マンション・戸建てのいずれにしても、住み替えの場合は新居で暮らすまでのスケジュールや必要な資金を確認しておきましょう。また、購入希望者による内覧が入った際は、事前にお部屋の空気の入れ替えをして清掃しておくなど見た目の印象を良くする工夫をすることも大切です。

土地

土地を売却する際には、権利関係が明確になっているか、隣地との境界が確定しているかを確認しましょう。隣地との境界がはっきりしていない場合は、土地家屋調査士に依頼して隣地所有者立会いのもと所有者同士が合意した上で境界を確定する作業を行うのが一般的です。不安な点があれば、売却を依頼する不動産会社に相談してみましょう。

不動産を売却するときは注意点もしっかり理解しておこう

不動産を売却する際には、今回ご紹介したように注意すべき点が多々あります。特に売却を依頼する不動産会社選びは非常に重要なポイントとなるため、複数の会社に査定を依頼して、信頼できる不動産会社であるかきちんと確認することが大切です。大きな金額が動く大事な取引になるからこそ、不動産売却までの流れや大まかな相場などを売主自身でもある程度調べておくとよいでしょう。

不動産の売却は、人生の中でも非常に大きな取引となるはずです。不安に感じる点があれば、不動産会社などに確認して一つ一つ整理しながら売却活動を進めていきましょう。

売却するときに注意する点 その1 -囲い込みに注意する